2007年度集中講義:


6月21,22日
(未定)

堀田貴嗣先生
(原研先端基礎)

マンガン酸化物の磁性

超巨大磁気抵抗現象で知られるマンガン酸化物は、 非常に複雑な磁気相図を示す。なかでも、CEタイプと呼ばれる不思議な 反強磁性相は1950年代に発見されていたが、 スピン構造が複雑であることに加えて、クーロン斥力の観点からは理解できない 電荷積層構造が現われ、その発現機構は長らく謎とされていた。
最近になってようやく、CEタイプ反強磁性相の発現機構が理解されるように なったが、それには難解な数学や奇抜な概念は特に必要なく、 固体物理学における基本的概念の組み合わせで十分理解できるものである。
本講義では、一電子の量子力学からはじめて、多電子の量子力学、 遍歴電子の取り扱い方を復習しながら、マンガン酸化物の理論モデルを構築する。 そうして得られたモデルに基づいて、マンガン酸化物の複雑な スピン・電荷・軌道秩序構造を平易に解説する。

2006年度集中講義:


11月30日,12月1日
G418(予定)

斯波弘行先生
(JPSJ編集委員長)

超伝導特論

超伝導のいつくかの問題を、主として理論の観点から、取り上げて話す。 以下のような話を予定している。
  1. どのような物質が超伝導になるか
  2. 超伝導のBCS理論
  3. BCS理論からの発展
    1. MgB2の2バンド超伝導
    2. スピン1重項電子対とスピン3重項電子対
    3. 反転対称性を持たない結晶における超伝導
    4. Andreev 反射
    5. 超伝導中の不純物
    6. その他
  4. 超伝導のメカニズム

2005年度集中講義:


11月30日,12月1,2日
G418

大川 房義 先生
(北海道大学
理学研究科)

強相関電子系の物理

希土類合金やアクチナイド合金のなかには電子の 有効質量が自由電子の 100-2000 倍もある重い電子系 と呼ばれる一連の物質がある。これらの物質は高濃度 (高密度) 近藤系、 あるいは近藤格子系とも呼ばれ近藤効果の物理と密接な関連が あると考えられている。これらを便宜的に正準 (canonical) 近藤格子と呼ぼう。 ここでは、正準でない近藤格子、たとえば遷移金属強相関電子系、 を扱う近藤格子理論、 いわば非正準近藤格子系の理論について紹介する。

銅酸化物高温超伝導体等の遷移金属強相関電子系は これまで、近藤効果と無縁と考えられていたようである。 しかし、最近の研究によると遷移金属強相関電子系も近藤格子としての 理論展開が有力であると理解され始めている。 単一サイト近似の有力性である。 正準近藤格子を扱う周期的アンダーソン模型、あるいは非正準近藤格子を扱う ハバード模型、$d$-$p$ 模型、あるいはまた $t$-$J$ 模型等にたいする最良の 単一サイト近似、全ての単一サイト項を数え落としなく考慮する近似、 は単一サイトでの強相関電子系の問題、すなわち、近藤問題 の有効模型であるアンダーソン模型を解く問題に帰着できる。 近藤格子理論は単一サイト近似で無視したサイト間効果を摂動で考慮する。 最良の単一サイト近似は空間次元無限大の極限で、如何なる秩序パラメター も存在しない状態に対して厳密である。したがって、近藤格子理論は、 空間次元数の逆数についての摂動展開理論でもある。

この講義では、まず、近藤効果の問題で重要と思われるいくつかの理論を紹介する。 また近藤効果・問題を解決していく過程・道筋で、 私たちが教訓として学んだ重要な概念についても紹介する。 その後、遷移金属強相関電子系を主たる対象とした 1963 年発表のパイオニア的3理論、 Kanamori 理論, Hubbard 理論と Gutzwiller 理論、と その他最近のいくつかの遷移金属強相関電子系の理論を紹介する。 最後に、パイオニア的3理論に矛盾しない非正準近藤格子系の理論、すなわち、 遷移金属強相関電子系を対象としたの近藤格子理論の最近の展開について紹介する 予定である。

7月28日,29日
G418

福島孝治 先生
(東京大学
大学院総合文化研究科)

スピングラスの物理 -- 平衡統計力学から非平衡緩和現象まで --

スピングラスは競合する相互作用の存在するランダムな磁性体であり,ランダ ムな凍結状態への相転移がおこるとされている.理論的にはレプリカ法や状態 方程式の方法等のランダム変数の取扱い方の進展により,平均場模型の範囲で はさまざまな平衡統計力学的な性質が明らかになった.一方で,そこで得られ た描像の現実的な有限次元系に適用に関しては未解決なことが残されている. さらに,実験的にはエージング現象や非平衡緩和等のガラスのように遅い緩和 現象が近年特に興味を持たれている.講義では,実験事実をまとめたあとで,理 論解析からわかることを解説して行く.
1.実験事実
1-1. 典型的な現象
1-2. スピングラスと呼ばれる条件
2.平衡統計力学的アプローチ
2-0. 理論模型
2-1. 平均場理論 レプリカ法 クイックレビュー
2-2. 平均場理論 状態方程式の方法
2-3. 平均場描像
2-4. 液滴描像
2-5. 数値計算でわかったこと,わからなかったこと
3.非平衡緩和現象
3-1. エージング現象,FDTの破れ
3-2. 平衡状態の知見との関係
3-3. 動的平均場理論とガラス転移
4.展望
4-0. スピングラス理論と情報統計力学
4-1. ガラス転移の理解へ向けて
4-2. 数値実験場として

2004年度集中講義:


9月16日,17日

和達三樹先生

「厳密に解ける模型」

9月27日,28日

押川正毅先生

「1次元量子系の物理」